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 資金決済法の改正により、仮想通貨は法令上、暗号資産に呼称変更が行われた。暗号資産は一時期の爆発的なブームの後、幾つかの大規模な事件に見舞われながらも落ち着いた様相を見せている。一般の人々の中には、暗号資産と電子マネーの違いを理解していないケースも多いが、IT技術者・研究者は、暗号資産と電子マネーの違いは勿論のこと、暗号資産の基本技術であるブロックチェーンについても理解している。

 ブロックチェーンの技術が活用可能な範囲は幅広く、暗号資産はその用途のほんの一例に過ぎない。ブロックチェーン技術は、暗号資産と切り離されたところでの応用が可能である。それにもかかわらず、暗号資産と切り離された純粋なブロックチェーン技術の研究は、日本においては盛んであるとは言い難い。情報処理学会マルチメディア通信と分散処理研究会の2018年9月の第176回DPS研究会の企画セッション「ブロックチェーンの可能性・未来・課題」において、「なぜブロックチェーン?」というキーノートスピーチに続き、「ブロックチェーンの可能性・未来・課題」と題したパネルディスカッションが行われているが、その後、ブロックチェーン技術の研究が盛んになっているようには見えない。更に、その後、2020年2月の情報処理学会誌(Vol.61, No.2)には、「ブロックチェーン技術の最新動向」という特集が組まれ、「Bitcoin技術のその後の動向」を含む4件の論文が掲載されている。また、同誌にはブロックチェーン技術によって実現される分散型Webの技術であるWeb3に関する解説として「Bitcoinの革新性が導くWeb3」も掲載されている。

 世界のビジネスシーンにおいては、ブロックチェーンの活用にかかわる実証実験、ビジネスにおける試験的活用が既に始まっているが、日本はそのリーダーとはみなされていない。ブロックチェーン技術は、そのシステム上のデータ管理に関して、単体ではなく複数の主体でのデータの共同管理が可能になったという側面を有し、その側面を最大限活用するブロックチェーン技術の用途として、公益にかかわるものや、社会的課題解決にかかわるものが世界で追求されている。本稿では、ブロックチェーン技術が暗号資産とは切り離された純粋な技術として、国連によって打ち出された「持続可能な開発目標(Social Development Goals, SDGs)」の達成に寄与するエコシステムの実現に有効であることを示すと共に、日本におけるブロックチェーン技術の研究の必要性について述べていく。